私は以前からそう思っていますが、ここに来て実に当たり前な発表だなと思ってしまいました。
<カラパイアより転載>
現在地球上では、病原菌の恐ろしさを身にしみて実感しているところだが、宇宙にはもっと厄介な細菌が存在する可能性もある。
最新の研究によると、哺乳類類の免疫系は、他の惑星からやってきた細菌に苦戦する恐れがあるそうだ。もちろん人間だってそうだ。
地球外生命体は地球とは違うアミノ酸で構成されている可能性
地球上のあらゆる生命は、「アミノ酸」という基本ブロックで構成されている。自然界ではおよそ500種のアミノ酸が発見されているが、地上の生命は22種の必須アミノ酸に頼っている(なお人間の場合、20種)。
しかし地球外で進化した生命ならば、地球の生命とはまた違うアミノ酸で構成されているかもしれない。
そこでアバディーン大学(イギリス)とエクセター大学(同)の研究グループがふと疑問に思ったのは、地球上の生命の免疫系はそうした別種のアミノ酸で構成された微生物にきちんと対応できるのだろうか? ということだ。
哺乳類は「ペプチド」が苦手
これを調べるため、マウスの免疫系を地球では珍しい「ペプチド」にさらして、その反応が確かめられた。
ペプチドとはアミノ酸が組み合わさったもの。実験で使われたペプチドには、地球では稀にしか見られないが、宇宙から飛来した隕石などではよく見つかる「イソバリン」と「2-アミノイソ酪酸」が含まれていた。
実験の結果、マウスの免疫細胞はそうした地球外ペプチドにそれほど上手く反応できないことが明らかになったという。
イソバリンと2-アミノイソ酪酸に対する「T細胞」の活性レベルは15%と61%。一方、地球で一般的なアミノ酸のみで構成されたペプチドに対しては82%と91%だったので、かなり反応が弱いことが分かる。
ちなみにT細胞はウイルスなどに感染した細胞を探して、それを排除するという免疫系の中でも主要な役割を果たしているものだ。
将来的な生命探査ミッションで生じるリスク
太陽系では地球以外の場所からも液体の水が発見されており、そこに生命が存在するのではと期待されている。
実際、火星のような惑星や土星・木星の衛星で、細菌やウイルスといった微生物の存在を示す証拠がないか探ろうという計画がある。
しかし、マウスの免疫が地球外ペプチドを苦手としているという事実は、地球外細菌が将来的な宇宙ミッションを妨げる脅威であるだけでなく、帰還後も地球の生命に危険をもたらす恐れがあるという。何しろマウスの免疫細胞の機能は、人間のそれに似ているのだ。
そうした地球外ペプチドは一応処理されますし、T細胞も活性化しますが、その反応は地球で一般的なペプチドへのそれに比べると非効率でした。
ならば地球外の惑星や衛星から生命を回収しようという宇宙ミッションでは、そうした地球外微生物が免疫上のリスクになるかもしれません(アバディーン大学 カティア・シェーファー氏)
地球外生命の発見。それは待ち遠しい発見であると同時に、じつは危険な発見でもあるのかもしれない。
この研究は『Microorganisms』(7月17日付)に掲載された。
Microorganisms | A Weakened Immune Response to Synthetic Exo-Peptides Predicts a Potential Biosecurity Risk in the Retrieval of Exo-Microorganisms
https://www.mdpi.com/2076-2607/8/7/1066
References:exeter/ written by hiroching / edited by parumo